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フジファブリックのこと

すごく応援していた人が突然いなくなってしまったことが僕にはある。この人の作る音楽をずっと聴いていたいと心の底から惚れ込んだ人が、ある日空へと旅立ってしまった。

 

フジファブリックの話です。

 

志村正彦のいない新体制になって初めて発表された「STAR」は志村の“不在”という名の存在感を色濃く感じた。

CDを聴いていても「この曲を志村が歌ったらどんな感じだろう」とつい考えてしまったり、ライブに行っても言葉は悪いが「まるで豪華なカラオケだな」と思ってしまったこともあった。

 

でも、そういったネガティブな感想は次の「VOYAGER」というアルバムで払拭された。いや、もっと言えば「VOYAGER」の最後に収録された「Light Flight」という曲によって。

 

「Light Flight」の歌詞を見ると、

「悲しい歌 消えないから 耳を塞いで歩きだした」という冒頭の歌詞と、

最後の「遠い日のメロディ 悲しいだけしゃないから 夜空に散りばめ 輝かせてみるよ」との対比が印象的で、

この間にある色んな葛藤や覚悟がまっすぐ伝わるというか、聴くたびに本当にグッときてしまう。今これを書いているだけで涙ぐんでしまうほど。

 

多分、これだけなんだと思う。フジファブリックが続いているのは。志村のことを、志村の作った音楽を無に帰したくないという。

それが、どんな批判をも飲み込んで3人が前を向く気持ちだと思うし、沢山の人が彼らを応援したくなる理由でもある。

 

それまでにも「ああ、これは志村のことを歌ってるんだな」と直感させる曲は幾つかあったけれど、「Light Flight」以降はほとんど見られないし、本当にこの曲はそういった気持ちの集大成なんだろう。

 

この「Light Flight」を境に変化したことは幾つかある。例えば「STAR」と「VOYAGER」までは含まれていた志村正彦の名前がメンバーから消えたり、

それと相反するように、ライブのMCやインタビューでそれまで頑なに触れなかった志村の話題が少し出るようになったり。

 

それは志村の不在という存在が消え、彼の死に正しく向き合えた結果なんだと思う。

消えない悲しみに対して、「悲しい記憶だけじゃない」と優しく笑うこと、

これだけが悲しみを唯一乗り越えられる強さで、フジファブリックは現在進行形でそれを体現しつづけている。

 

 

もし志村が今も生きていたらどんな音楽を奏でていただろうかと考えると今でも狂おしい気持ちになったりするけれど、それは誰にも分からないことだし、

今のフジファブリックもすごくすごく最高なバンドなので、ずっとずっと応援していきたいと思う、というお話。